昨年訪欧の折,ファグス靴工場を訪れたことをあるきっかけで思い出した。
1911年当時20代のグロピウスとハンネスマイヤーの設計である。
工場は原状に きわめて近い保全がなされ,その上問題の発生を招いていたディテールの
改善も行われていた。端的にはこの建築を特徴付けているスチールのカーテンウオールの改修である。ガラスをサッシの細さを損なうことなくペアガラスとしているのだがこのガラス新たにこのため極く薄い物を作ったと言うのである。
ファグスの 主要な仕事はすでに他の職種に転換、靴の木型も当然のことだがだいぶ以前にその大部分がプラスチックなどに置き換わっているはずでもある.工場は一部伝統の木型生産を行いながらファグスの記 憶と誉れのために整えられ維持されている様に見えた。われわれが覗き込む工場内では木型を加工する職人が見えたがそののんびりとした仕事振りは産業遺構、 ミュージアムとしてのわれわれ見学者 へのサービスのようにも見えるのであった。特に驚いたのは当時の木造6階建て?の巨大倉庫が全館博物館としてしつらえられておりグロピウス、バウハウス、 それに企業自 身と創業者の展示が行われていることであった。そして感心したのはその展示のデザインが優れたレベルであったことだ。原状の尊重と存在した問題の今日的解決、原状とのポジティブな応答による自立し応答するデザイン、ここが何より大切なことであり再生は新築以上に知恵と戦略を架ける価値があるフィールドであるのだ。この国の建築がとかく短寿命なのは竣工後の改修、手入れが極めて安直に、もっと言えばやっつけ仕事として行われる。そしてその結果がそれを見るも無残な物としそれが破壊解体の合意の根拠を作り出す、こうしたケースがとても多いのだ。
昨年のファグス訪問、われわれはこの再生整備 が行われた後の最初に近い訪問者であったようであった。
世界遺産登録の準備がほぼ「完了」と言っていたから、まもなくここは関係者の期待通り「モダンデザインの聖地」として人人でにぎわうこととなろう。(野沢)



↑倉庫を転用したミュージアム

↑ファグスで配布されているパンフレット
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