大分以前のことだが、確か新宿紀伊国屋で地方の出版物の小特集コーナーで見かけ購入したもの。名久井文明著「九十歳岩泉市太郎翁の技術」一芦舎刊である。
北上山地に住む岩泉市太郎翁の持ち物総量検査、言ってみればそういうもの。岩手大学の学生それから名久井さんの奥さんを動員して驚くほどの調査の結果である。岩泉市太郎翁は木挽であり、杣(ソマ)である。農業から炭焼きなど日常の生活のすべてを自らが行う。ここにわれわれは驚く。日常のすべてにかかる道具が彼のものであり、可能であればそのほとんどは彼の自作である。たとえば鍛冶屋に依頼し購入した刃物、この柄は彼の自作だ。何よりこれほどの道具を駆使しての生活がごく最近までのわれわれの営みであったことに驚く。貨幣のほとんど不要な社会の姿でもある。
目次を転載する。すべてのページに道具の実測図と由来、写真が載る。


目 次
●北部北上山地を彩る縄文文化の残照
Ⅰ雑穀栽培の伝統
Ⅱ北部北上山地の山村「瑞神」一着泉市太郎翁との出合い
Ⅲ種子食の伝統
・1瑞神における種子食−シダミの処理工程
・2縄文時代と現代をつなぐキーワード「乾燥脱穀法」
Ⅳ樹皮加工の伝統
V植物性素材による編組技術の伝統
VI北部北上山地に伝えられた伝統的諸技術の「もの」による記録
●岩泉市太郎翁年譜
●岩泉市太郎翁の造形技術
Ⅰ柵・木挽きの仕事
1 柵の仕事一枚木4,000丁造材の現場から
・(1)岩手県下閉伊郡安家村高須賀葡萄山まで
・(2)一日の生活
・(3)物資の購入−「仕送り」のこと′
・(4)柚の賃金の算出方法
2 木挽きの仕事
・(1)「伊藤萬兵エ様の挽材のひかえ」から
・(2)木挽きの賃金の算出方法
3 棚・木挽きの造兵の種類と運搬方法*
・(1)柚の道具
・(2)木挽きの道具
4 伐採から製材までの手順*
・(1)木を伐り倒す
・(2)枝を落とす
・〈3〉長さを決める
・(4)墨を打つ
・(5)大どころを削り落とす
・(6)仕上げる
5 鋸の柄の付け方*・
6 鋸の日立て、鋸直し、刃焼き*
Ⅱ木工
1 山村生活における自給的木工技術
2 大工道具
Ⅲ樹皮加工
1 樹皮縄について
2 背中当ての製作
3 蓑の製作
4 こだしの製作
Ⅳ藁加工
1 つまごの製作
2 わらじの製作
3 じょうりの製作
●岩泉市太郎翁の生産技術
Ⅰ製炭
1 製炭の仕事
2 製炭の仕事にかかわる用具
Ⅱ薪(たきぎ)取り
1 薪取りの仕事
2 薪取りの用具
Ⅲ牛の飼育
1 山村生活と牛
2 牛の飼育にかかわる用具
Ⅳ農耕
1 雑穀の栽培
2 農耕にかかわる用具
・(1) 肥料運搬
・(2) 耕耘・畝たて
・(3) 植え付け
・(4) 除草
・(5) 穂から穀粒をはずす
・(6) 大小のごみを除く
・(7) 計量
・(8) 貯蔵・
・(9) 火力乾燥・
・(10) 穀粒から皮を除く・製粉
●その他
Ⅰ食品の加工・食事にかかわる用具
1 豆腐作り
2 味噌作り
3 餅を舂く
4 調理・食事
Ⅱその他
1 住
2 養蚕
3 衣
4 娯楽
実測図の監修を終えて
おわりに
付編1「樹木の用途―木の名前と使用調べ」岩泉市太郎翁筆記
付編2「山根、宇部地方の盆踊り唄」岩泉市太郎翁筆録・採録
引用・参考文献
索引
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