数年前に癌で去った高橋元がJIAの環境委員会にいたころ、毎年のようにエコバウツアーを引きつれドイツを見て回っていた。彼がケーニッヒの著作の翻訳にかかわるのもその縁からである。僕も一度誘われて同行した。其のころからツアーを支えるイケダコーポレーションはいわゆるエコ建材輸入を業務とする商社である。高橋亡き後のツアーに先回に続き説明役を依頼され同道した。参加希望人数が多くまた会議メッセなどのたてこむ時期のツアーは大変なものであった。以下簡単な旅行記である。
9月14日 コペンハーゲンに着く。ヨーロッパは二年ぶりである。今回のツアーもケーニッヒがアレンジしてくれている。15日朝、Tegnestuen Vandkunsten事務所訪問 週末にかかわらず、ムサビ出、日本人、女性のスタッフがボスとともに出迎えてくれる。申し訳なし。日本で建築を学んだ者が海外のあちこちで仕事をすることが普通になっている。この事務所は数百年を経た厩を改修した建物をオフィスとしているさすがに冬は寒そうではあるが。集合住宅が主な仕事との話。魚雷艇格納庫改造のコンバージョンによる巨大集合住宅を見る。原型は魚雷艇のドックを兼ねるものであったから倉庫内に水路があり海に面して建つ。高さは住宅5層分、20メートルほど、長さ150メートルほどか。倉庫時代の林立する高いコンクリート柱、それにかかるトラス、これだけを残し内部であったところに集合住宅を作っている。既存の列柱はバルコニーのサポート。本体とのヒートブリッジを切る。それだけでなく新旧の並立がきれい。トラスは最上階住居に入り込むが鉄材が細く問題ないのであろう。住戸内もうまい。歴史と敷地に助けられている。大きな倉庫のシルエットが存置されることが都市の記憶の継続となる。この辺はロンドンのテートと同様の価値と思う。A+Uあたりで紹介されたのだろうか。
(写真:Torpedohallen Danneskiold−Samsoes Alle)

午後ルイジアナ美術館訪問、なんといってもやはりここは建築とそれを取り巻く環境がいい。今は入り口ホールとなっている開館当初のささやかな建物の壁面を覆う植物が繁茂。ここでも数次に渡る計画の継続、流れる時間が建築の主題になっている。入ってすぐの付近はアヴェドンの企画展である。ジャコメッティを見ながらマレリという作家の展示、デンマークのフォークな作家の作品群を横目でみる。テラスでビール。週末ということもありたくさんの来館者。ピクニックのようにここに一日滞在し、屋外でのんびりし食事までここで取る、そんな美術館である。地下で話題の人、セシルバルモンド展を開催している。構造家の個展が開かれることがなにも不思議で無い時代である。ここは建築家を企画展で取り扱うこともよくある。ショップでルイジアナを建てた建築家の一人ヴォラートの作品集を入手。どちらかというと、家具スケールに近いところがうまいデンマークらしい建築家のよう。あわせてセシルバルモンド展のカタログを買う。
(写真:Louisiana Museum of Modern Art)

その後キンゴーへ、キンゴー後の計画であるフレーデンスブルグへは訪問したことがあるがキンゴーは初めての訪問。築50年ほど,二三の家が改修工事をしていた。配置図で知るあの池がある。周辺でも同様の池を見る。自然の池である。周囲の茂みが深い。住戸平面が記憶よりもっとさまざまある。配置も必ずしもコンセプチュアルではない。自在。敷地が例の池に向かって幾分起伏を持っているせいかもしれない。フレーデンスブルグではタイプがひとつだったと思うからキンゴーでの思考があって、フレーデンスブルグのプランはその後整理を試みた結果のことと思う。規則だっていない配置の中をさまよう感覚が図面では到底わからない。牧草地であったという敷地の記憶につながるのと思わせる。きわめて人工を感じない景観、シークエンスを作っている。集落に極めて近い。よかった。
(写真:Kingohusene oder,Romerhauser,Kingosvej,Carl Plougs Vej,Helsingoer)

キール泊、海岸沿いに並ぶ19世紀中ごろ以降に建てられたのではないかと思われる大きな家々が並ぶ。その中のキールヨットクラブという名前のホテルである。水準の高い施設。これも大きいヴィッラを、増築改修したものであった。既存部の保全の状態が極めてよい。